粉瘤という皮膚疾患を聞いた事があるでしょうか。ニキビ等とは違って、あまりよく知らない人も多いかも知れませんが、皮膚疾患の中では決して珍しくはないものです。誰にでもできる恐れのある皮膚疾患ですから、症状や特長などについて知っておいて損はありません。あれ、もしかしてこれって粉瘤かな…?と思った時に正しく対処をする事ができるようにしておきましょう。
粉瘤(アテローム)とは?
粉瘤は、別名アテロームとも呼ばれる皮膚疾患です。始めは皮膚の中にコリコリとしたしこりの様なものができて、それが次第に大きくなっています。大きくなると3センチをこえる半円球状の腫瘍になり、場合によっては10センチ以上もの超ビックサイズになってしまうことも。そこまでの大きさになり、しかも腫瘍と言われると途端に怖い疾患なのかな?と思ってしまいますよね。ですが、粉瘤の多くは良性の腫瘍である事がほとんどですから安心してください。
粉瘤の正体は?
粉瘤は、脂肪の塊のように思えるかもしれませんが、その正体は脂肪腫などではありません。粉瘤とは、皮膚の下に袋のような構造が出来上がってしまい、その袋に古い角質や皮脂が溜まってしまったものです。粉瘤は、脂肪腫やニキビにも見た目は似かよっていますが、腫瘍の中身は、古い角質や皮脂ということになります。ですから、脂肪細胞が増大してできた脂肪腫とも、またアクネ菌の増殖によるニキビとも違うのです。
粉瘤に似た疾患は?
実は粉瘤に似た疾患は色々とあります。ニキビや脂肪腫よりも、耳馴染みがない病名ばかりですが、頸部嚢胞、石灰化上皮腫や毛巣洞など様々な皮膚疾患があるのです。
頸部嚢胞
首にできる嚢胞性頸部腫瘤のことで、側頸や正中に見られます。先天性のものと後天性のものがあり、首の皮膚の下に粉瘤と同じように袋が出来そこに液体がたまってしまう疾患です。
石灰化上皮腫
顔や腕、足などの皮膚の一部が石灰のように硬くなる良性腫瘍の一つです。小児に多くみられ、粉瘤と同じくらいの大きさですが、粉瘤よりも触った感触が固いのが特徴です。医師であっても粉瘤との見分けがつきにくく、レントゲンで石灰化が見られるかどうかで診断をします。
毛巣洞
おしりの割れ目の上部分にできる腫瘍で、皮膚の下に毛が塊となって巣を作る疾患です。毛深く肥満の男性やデスクワークや運転手など臀部が圧迫や摩擦される仕事をしている人に多く見られると言われています。
外歯瘻
他にも酷い虫歯になり、その膿が皮膚を通して排出されることで、しこりができる外歯瘻なども粉瘤と間違えられる事がある疾患でしょう。
粉瘤ができる原因は?
粉瘤は、皮膚がめくりかえって袋が出来あがりそこに角質や皮脂がたまることで腫瘍になります。ですから、袋上の構造物ができる事が原因となります。しかし、何故その袋ができてしまうのかは、まだ完全に解明されている訳ではありません。今のところ分かっているのは、擦り傷や打撲などの外傷やヒトパピローマの感染が影響しているということです。ストレスという説もありましたが、実際はストレスなどよりも上記の皮膚への直接的なダメージや感染が大きな原因だと考えられます。
粉瘤は治療が必要?
粉瘤は、小さいと痛みなどもなく見た目さえ気にしなければ普通に生活することができます。ただし、体に吸収されて自然に治るということはありません。それどころか、放置をすることによって大きくなってしまうケースの方が圧倒的に多いです。
急激に大きくなり、炎症を起こしたり化膿したりすると、少し触れただけでも飛び上がるほどの痛みを伴う場合があります。小さいうちに袋を取り除いてしまえば、治療も簡単で傷跡も目立たないため、小さいうちに治療をするのがオススメですが、様子を見る人も少なくありません。
粉瘤の治療方法は?
粉瘤の治療には、どんな方法があるのか見てみましょう。
粉瘤が炎症を起こしていたり、膿をもっていたりする場合は、抗生剤を服用する事があります。また、切開排膿術といって粉瘤のたまっている膿を出す治療が行われることも少なくありません。しかし、この2つは粉瘤の根治治療にはなりません。根治治療には、粉瘤の袋ごと取り除く必要があります。
粉瘤の袋を取り除く外科的な手術には小切開摘出術とくり抜き法が一般的です。上記は、メスにより皮膚を切開してピンセットで袋をつまみ出し、縫合して完了となります。
くりぬき法は、最近多くなってきている治療方法で小切開摘出術やりも短時間で済み傷跡も小さいというメリットがあります。これは切開ではなく、パンチで皮膚ごと腫瘍に穴をあけてその穴から内容物と内容物がなくなり萎んだ袋を取り出すという方法です。縫合をする場合もあれば、状態によっては縫合なしで終了することもあります。
粉瘤を予防する方法はあるの?再発を防ぐには?
しかし、根治治療を行っても場合によっては再発をしてしまうことも。粉瘤の予防の為には、体を清潔に保つこと、そして体を負傷しないように気を付けることが大切です。また、再発を防ぐためにも予防のためにも免疫力を高めるというのも有効だと言われています。
そして、一度の手術で再発をさせない為にには、いつ手術をするのかも大切。炎症などを起こしていない状態で外科的な治療をしたほうが再発率は圧倒的に低下します。
紛瘤ができやすい人の原因とは?予防方法は?
粉瘤ができてしまった場合の注意点
粉瘤ができてしまった場合は、あまり触ったりせずに清潔を心がけるようにしましょう。また、皮膚科を受診するのがベストです。自分で内容物を排出しようとしたり、潰したりするのは絶対にやめましょう。細菌感染を起こすことにより悪化する事も少なくないからです。気になる場合は、病院へ…これが最も賢明な判断と言えるでしょう。
また多くの粉瘤は良性ですが、癌化する可能性がない訳ではありません。そのことについても頭の中にいれておきましょう。
まとめ
粉瘤は皮膚の下にできる良性の腫瘍です。軽いものは痛みも伴いませんが、悪化すると炎症や化膿をする事があります。また稀に癌化する場合もある皮膚疾患です。急に悪化する事も多いので、自分で対処しようとせずに皮膚科を受診することをおすすめします。